理事長所信

2008年度(社)熊本青年会議所
第54代理事長 橋本 龍生



価値あるもの

私たちにとって国や故郷(ふるさと)とは何なのかを考える時代になってきました。世界に誇るべき歴史と伝統をもつ日本の精神文化が近年、海外から“道(どう)”という言葉で注目を浴びています。
 本来、日本人である私たちには先人を敬い、祖国に誇りを持ち、郷土に対する熱い思い、そして家族や友人といった隣人を思いやる心が培われているはずです。江戸時代以降の日本は、歴史が証明しているように学問を身につけ国の発展を遂げてきました。「塾」の存在も忘れてはなりません。寺子屋で学問を学び、塾で精神を鍛え、礼儀(マナー)や秩序(ルール)という“道”を修得していたのです。日本で初めての「塾」である松下(しょうか)村塾(そんじゅく)から輩出された偉人たちも、また国内外で革命や改革を成し遂げてきた偉人たちも、同じように“道”を学んでいました。礼儀や秩序といったものが日本人の武士道であるならば、本当の意味での日本の美とは、見たままの形の美しさではなく「心の美しさ」ではないでしょうか。現在(いま)の世の中に、子供たちだけではなく大人たちにも欠如しているものの一つがこの「心の美しさ」ではないかと私は懸念しています。そして、この「心の美しさ」こそが、日本人にとって価値あるものだと信じ、今こそ「心の美しさ」の大切さに気づいてもらうために郷土愛、祖国愛を再構築していく必要性を強く感じるのです。

 戦後、経済の復興を願い、足早に高度成長を遂げてきた日本人は、時間の有効活用を第一に考え、がむしゃらに働いてきました。その結果、グローバル化の波が押し寄せ、ファーストフード等の安くて早いことを売り物にした商品やサービスが急速に普及しました。しかし昨今、スローソサエティ、スローフードやスローライフといった言葉に代表される「スロー」というキーワードを肯定的に捉え、古くからの文化・風習の良さを再認識するようになってきました。「スロー」は単にゆっくりとかのんびりという速度を表す意味ではなく、時間をかけて先を見通し、またしっかりと古来の文化や伝統を大事にしながら着実に一歩づつ進んでいくことなのです。つまり近未来を創造していくなかで、いろいろな考え方や方向性の功罪を考えていくことが重要なのです。今日(こんにち)この日本が、この熊本が必要としているのは「かたちの美しさ」ではなく、「心の美しさ」すなわち「本当の価値」であると確信します。

地域(まち)の活力(ちから)

50余年前“新日本の再建は我々青年の仕事である。”と日本の青年たちが立ち上がりました。日本JCの誕生です。(社)熊本青年会議所も6.26大水害から2年後の昭和30年、郷土を愛する46人の若者によって設立されました。JCは「明るい豊かな社会」の実現を理想に掲げ、英知と勇気と情熱を持ち活動を続けています。各地域で、また日本国で、そして世界中で、世界平和を願い様々な運動を推進しています。時代の流れに沿いつつ、JC活動は変化してきました。いつの時代でも私たちJCはその時代の地域を想い、もちろん日本という国家レベルにおいても、また世界中においても青年らしさを大事にしながら活動に取り組んできました。そして昨今、格差社会が生じ日本人としての精神や誇りが失われつつあり、教育基本法の改正、そして日本国憲法の改正という戦後60年手付かずであった「聖域」の改革が必要とされている中で、日本JCは日本国憲法JC草案の作成や日本の文化・歴史を再評価するアニメーションの製作などを手がけています。
JCとは「まちづくりの出来る人づくり」、つまりリーダーを育成する団体です。JC運動とは未来を創造し常に進歩への挑戦をし、他者とも協力しあい、青年らしく活動する運動です。“地域に根ざした運動”とよく私たちJAYCEEは口にしますが、実際に地域から求められるのは汗をかきながら元気に活動している姿なのです。我々JCの熱い想いや考えからにじみ出る「活力」を地元“火の国くまもと”に発信し続けたいと考えます。JCは、市民や県民が主体的・自発的に参画するような社会を創っていくリーダー的存在であるべきです。
熊本JCはこれまで人間力開発(リーダーシップ・自己啓発)と、地域開発(まちづくり)をテーマに内外に向け事業を行ってきました。しかしながら市民のJCに対する認識は向上しているように感じられません。JCは自分たちの思いに基づいて事業を計画し実行していますが、私はJCが市民や事業参加者からの声(外部評価)を反映したり、また検証したりすることをあまり重視していないことを危惧しています。それらは今後JCが行っていく活動に対する評価に繋がっていくと思います。本来、市民から共鳴が得られる運動と共感が得られる姿勢が相俟ってこそ私たちの活動や運動の存在価値は発揮されるのです。つまり市民を縦(│)の軸、JCを横(─)の軸としてお互いの連携(コミュニケーション)が円滑になされれば必ずやプラス(+)になっていくことでしょう。この効果こそが、プラス思考の発想に結びつくと確信します。皆さん御承知の通り日本という国が大きく変わろうとしています。そうした社会の変質を見極めながら、シニアの先輩方や関係諸団体、また姉妹JCとの連携も考慮していきます。そして、未来の子供たちのために、明るい豊かな社会(まち)のために積極的変化(ポジティブな変化)を創出し、地域から頼られ、そして地域(まち)の活力(ちから)となることを目指します。

ソーシャルサービスと市民参画

熊本という地域における問題を提起してみたいと思います。阿蘇くまもと空港国際線における観光創造や新幹線開通による人口移動、さらには市町村合併を視野に入れた政令指定都市問題とその先にある道州制の導入を見据えた州都獲得など難題は山積みです。これらの難題の解決はもちろん大事ですが、その解決にあたっては、これまで受け継がれてきた先人への感謝や誇りといった本物の伝統を大切にする視点が必要です。そうでなければ、いくら熊本が経済的に発展したところで、未来の子供たちの郷土愛を育むことは不可能になってしまいます。あくまでこの熊本をつくるのは熊本県民であり、熊本市民の方々です。  
責任転嫁や言い訳ばかりの時世、自分たちの事は自分たちが解決していくことこそが、まちが自律的に発展していく一歩だと考え、県民・市民と一緒になって生活者起点となる社会づくりを目指します。
私たちJCは、インターミディアリー(中間的存在)です。つまり行政と市民、各種団体や機関のパイプ役であるべきだと考えます。よく国やまちが悪くなっているのは、政治家のせいだというようなことを耳にします。その政治家を選挙等で選んでいるのは、国民、市民の皆さんなのです。ということは、皆さんによって選ばれた人たち、即ち皆さんの考えや決断が間接的に政治や社会で影響している事になるのです。これまでの国や地域のあり方は国民・市民のあり方に起因するものだったと考え、個人の理念や目的をしっかりと持って今後政治に対しても積極的に参画していくべきです。
最近選挙などの際にフォーラムや公開討論会、個人演説会という手法を使った政策発表の場が頻繁に設けられるようになってきました。まさに、このような場の提供こそがJCができる市民参加型運動だと言えます。だとすれば、熊本JCも先に述べた地域の課題を市民と一緒に考えられる機会を色々な形で提供していくべきですし、そうすることで市民から求められる団体として評価されていくはずです。またそのように必要とされる団体こそが今後、公益社団法人として承認されるはずです。

変動する地球環境

 近年、地球環境というテーマがいろんな所で話題に取り上げられています。環境問題が映画化される時代でもあります。変動する地球環境は大きく問題視され、一番身近な問題として地球温暖化があります。地球温暖化問題とは、地球規模で気温上昇(温暖化)が進行していくことです。地球温暖化が続くとどうなるのでしょう。最高気温及び最低気温の上昇は当たり前ですが、異常気象の頻発などが予測され、さらには二次的影響としての打撃や食糧難による飢餓などが心配されるようです。また、オゾン層破壊問題も深刻です。人類が発明した人工物質である「フロン」が1928年に開発されました。ところが1974年フロンが大気中に放出されると上空の成層圏まで上昇し、オゾン層を破壊してしまうというメカニズムが発見されました。オゾン層破壊は、紫外線増加による皮膚がんや白内障などの人的な悪影響が懸念され、さらに動植物の遺伝子を傷つけ生存を妨げる恐れがあるといわれています。森林伐採による問題点ももちろん考慮していくべきです。
私たちがこうした問題の深刻な状況を考えると、まず何から始めるかと考えるのは遅い段階かもしれません。ここでは迅速に討議し、すぐにでも環境に対する運動を推進していきたいと考えます。
それでは、地元熊本の環境を考えてみようと思います。古くから『水の都』として呼ばれる熊本は、水環境に恵まれた都市です。上水道に使う水の全てを地下水でまかなっている都市は全国でも少数で、熊本はたくさんの「水の財産」を持っているといえます。熊本の地下水が豊富なのは、阿蘇の伏流水という地下水が県内のいたるところで綺麗な泉として湧いているためです。しかし現在では土地利用の変化(都市化、涵養池(かんようち)となる田んぼの転作など)により、年々水源となる地下水の量が減ってきているようです。さらに水質問題をも考えねばなりません。実は熊本県が「熊本名水100選」に選定した、水前寺成趣園や江津湖に生息している植物たちが、日を追うごとに減少傾向にあるそうです。原因は主に、工場廃水や家庭排水、また川へのゴミの投げ捨てなどで、私たちで直ぐに対応し改善できることなのです。
小さな心がけが「水を守ること・環境を守ること」に繋がっていきます。大自然から頂いた“奇跡の水”を有効活用し絶やすことなき資源として、次世代に残していくことが現代に生きる私たちの責務だと考えます。

「生きる力」から「いきいきと生きる力」へ

巷間(こうかん)では教育にまつわる議論が盛んなようです。確かに世間を見渡せばニート問題、しつけ問題、低学力の問題、犯罪者の低年齢化等々、教育に関する諸問題は後を絶たないかのような様相を呈しています。親も学校の先生でさえも自分の教育に自信を失っているようにみえます。
 教育において人間という動物には、他者から教わって学ぶ一面と、自ら学んでいく一面があるといわれています。私たち大人が様々な教育理論や優れた先生にすがりつきたくなる心理も理解できますが、「子供には育てる部分と、自ら育つ部分がある」という事を私たち大人が自分の経験と勘でつかんでいくことが大切だと思います。
 青少年事業、それは子供たちにとっての目的や成果が大事ですが、大人である私たちも一緒に感動や事業達成の喜びを感じることで相互における信頼感や教育観に結びつけられるはずだと確信します。近年、熊本JCでは「生きる力」をテーマに事業を開催してきました。そこで私はこの「生きる力」を次のステップである「いきいきと生きる力」に繋げていきたいと考えます。その一つの切り口は“食育”に関する問題です。食物に対するありがたさ、食事を作ってくれる者への感謝の気持ち。どんな小さなことでも驚きや発見が子供たちの食に対する興味にも関心にもなっていくのです。「食は命」と昔から言われてきました。そして「食は心」でもあり、「食は絆」でもあるはずです。子供の成長、それは心と体の両方がバランスよく成長していくことであり、それは大人の責任でもあります。このことを本年熊本JCが取り組んでいくべき大きな課題の一つとしたいと思います。

JC内の意識革命

JCでは一つの事業を実施し終了するまでにCD5サイクルがあります。調査・分析・企画・行動・評価です。これらの過程の中で自然に人が育成されていくのです。何より様々な経験や出会いで色々な事を学び大きくリーダーとして育つことが、JCが「青年の学び舎」と言われる所以です。
ここで少しリーダーに求められる資質について述べたいと思います。リーダーとは理念(価値判断がぶれないこと)・洞察力(先を正しく読むこと)・情報力(良い判断材料を持つこと)・情熱や行動力(結果を出すこと)だと教えて頂きました。そして、昨今のリーダーに求められるのは、4つの資質以外に“みんなの力を結集できること”です。まさに、(社)熊本青年会議所の会員一人ひとりがリーダーとなっていかなければなりませんが、まずは自分たちの活動を楽しみ、将来性を考え地域に発信できる運動を普及していくべきです。このことを組織で考えてみると、今後の熊本JCが将来性を見据えた中長期ビジョンの提案や社会問題に早急に取り組み、地域から求められる団体として新たな「かち」を創出していく必要性があります。
さて、私たちJCメンバーは何故、何のためにJCをやっているのでしょう。あなたはJC活動の中で具体的な目標はありますか。夢はありますか。人生の喜び(幸せ)とはなんですか。目的を明確にすることが意識改革の始まりだと強く感じます。人間が力を出そうとする時、目標や目的があるとないとでは意気込みが違ってくるのです。例えばJCの理念である明るい豊かな社会のため、住みやすいまちをつくり幸せになるためというのは一つの答えであると思います。人生の幸せや喜びとは何かを考えると、JCにも家庭にも仕事にも共通のものがあるように思います。私は“期待され、期待に応えること”が喜びや幸せと感じる大きな要素の一つだと学びました。誰でも期待されたいし、またその期待に応えようと頑張るはずです。期待に対する需要と供給のバランスが高ければ高いほど成果(結果)や感動があるのです。だからこそ一生懸命に頑張り、最高の結果を出すことを目指していくべきなのです。何事にも目標を掲げ精一杯にやることをお願いします。そして各種大会及び会合へ積極果敢に参加しましょう。
LOM全体としても、メンバー一人ひとりの意識向上を目的とした最適且つメリハリのある組織運営を心がけていきます。

“挑戦”と“気づき”

 「宿命に生まれ、運命に挑み、使命に燃える」これは故小渕恵三元首相、座右の銘です。2000年九州・沖縄サミットの主会場であった沖縄県名護市にある万国津梁館(ばんこくしんりょうかん)にある故小渕首相の坐像に刻まれています。私はこの言葉に出会い、人生における出来事がすべて必然であると考えるようになりました。そうすることでJCでも、仕事でも、家庭でもそれぞれの立場において些細なことでも意味や意義を見出し、やりがいや喜びを感じることによって多くの“気づき”を得ることが出来ました。本年、(社)熊本青年会議所理事長として、会員一人ひとりに“気づき”を見出してもらえるよう精一杯挑戦し続ける所存です。まずは私自身がしたたかで、強く、誠実な、気高い一人のJAYCEEであるよう努力する事にコミットメントいたします。人格を修養し精神を練磨する「修練」を行い、LOM内のメンバーや全国の志同じくする者たちと連携を図りながら「友情」を築き、必要であれば行政の協力を仰ぎながら市民の参画意識を促進させる「奉仕」としてまちづくりを展開していくことをJC三信条に倣(なら)って実践していきます。
私たちJCにはソーシャルサービスを提供していく使命があります。つまり、明るい豊かなくまもとの実現に資する事業・運動に挑戦することが会員一人ひとりに気づきをもたらすと私は確信しています。その結果として、熊本JCがもつ無限の潜在能力が顕在化し、熊本JCが魅力あるものとなるのです。
 本年、熊本JCは力強い、頼られる公益法人への進化に挑戦します。


理事長所信表明

【理事長挨拶(前編)】


【理事長挨拶(後編)】